machicox’s blog

平穏無事に暮らしたい

世界を測るものさし

今、「誤作動する脳」という本を読んでいます。

 

レビー小体型認知症」と診断された女性が、幻視、幻臭、幻聴など五感の変調を抱えながら書いた病気体験記?です。

 

まだ途中ですが、とてもハッとさせられることが書いてありました。

 

病気の症状で嗅覚や味覚がなくなったことを、著者は家族にも伝えていなかったそうです。

 

そんな中、作った味噌汁(味見してないからおいしく出来てるか分からない)を旦那さんに「おいしくない」と言われてしまいます。嗅覚や味覚の異常以外にも、病気の様々な症状や自分の将来への不安で精神的に参っていた著者は、思わず「だったら自分で作ってよ!」と旦那さんに怒鳴ってしまいます。著者の心身の状態を知らない旦那さんは、初めて見る妻の姿に驚きます。

 

その後著者は、認知症についての本の患者家族の体験談のなかで、まったく同じ場面を読みます。(患者が作った料理をおいしくないと言ったら怒鳴られた、という体験談)その場面には、こんな解説が添えられてました。

 

認知症になると性格が変わり、短気になり突然怒り出すようになる。」

 

著者は性格が変わってしまったわけでも、瞬間的にキレて怒鳴ったわけでもありません。五感が失われた悲しみ、それを家族にも言えない孤独、病気の予後に対する大きな不安、そんな抱えきれない気持ちが、旦那さんの一言で爆発して、思わず大きな声を出してしまっただけです。

 

でも、「認知症」というレッテルが貼られると、そんな当事者にしか分からない事情や想いは存在することにすら考えが及ばず「病気で性格が変わった」「短気になった」とされてしまうのです。

 

自分が持っている知識やものさしを疑いもせず、それでものごとをジャッジしたりレッテルを張ってしまう怖さを感じました。

 

たまに、自分が持っているものさしこそが正しいんだと疑わず、それで全てを測ってなんでも分かったように偉そうに生きてる人を見ますが、そんな不寛容で、視野が狭くて、独善的な世界の見方で生きていくのは避けたいです。

 

不必要に人やものごとをジャッジすることなく、でも、色々なものさしで世界を眺められる、そんな心豊かな人になりたいです。